ゲンちゃん日記・平成31年3月「豚コレラの発生に思うこと」

最終更新日 2019年3月16日

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ゲンちゃん日記・平成31年3月「豚コレラの発生に思うこと」

シロフクロウ

(写真:雪あかりの動物園でのシロフクロウ)

 雪あかりの動物園も無事に終わりホッと一息ですが、前日までの大雪と最強寒波襲来と結構体力的にはへこたれました。曇り時々雪の中で日中の最高気温がマイナス14度前後でしたが、屋外で過ごしているとさすがに骨身にしみました。夕方になりキャンドルに点火するのですが、火がつかない…。苦労しました。雪あかりの動物園は、団体で訪れる来園者が少ないこともあり、どこか慌ただしさのない、静寂に包まれた雰囲気です。自分たちでもなかなかじっくりと見ることのない厳冬の中での動物たちの姿に、改めて寒さの神々しさのようなものを感じました。キーパーズトークなどマニアックなイベントなど盛りだくさん行いましたが、後になって多くの職員からあれやこれや反省点もたくさん出ました。反省点が多く出るのは一生懸命の裏返しなので、来年はさらに充実した時間を来園された方々に提供できると信じています。多くのボランティアの方にも協力していただきました。本当に皆様お疲れ様でした。

 さて話は変わって干支、今年は亥年イノシシですね。旭山動物園ではかば館にイボイノシシ、こども牧場に家畜のブタが暮らしています。関心が高くなる年ですから様々な情報発信を!と考えていましたが、そうも言ってられなくなりそうです。昨年26年ぶりに岐阜県で豚コレラが発生し、現在も終息の見通しは全く立たない状況です。しかも家畜のブタだけではなく野生のニホンイノシシでも感染が確認されその拡大が懸念される状況になってしまいました。日本では今まで奇跡的に豚コレラを始め狂犬病も口蹄疫も在来野生動物種には感染拡大せず人為的な環境だけでの問題として解決できていました(※高病原性鳥インフルエンザについては季節性があることなど状況が異なります)。

 身近な野生動物の中で一年中病原体が維持される状況になってしまうと今までの防疫体制を抜本的に見直さなければならない事態となります。豚コレラウイルスの感染ルートは、ヒトのインフルエンザと同じようにウイルスが付着したものを媒介したり様々なルートが考えられます。とてもやっかいです。北海道には野生のイノシシはいませんからそれほど心配ないのではないか?と思われるかもしれませんが、そうとも言えないのです。そもそもなぜ豚コレラが?なのですが、ニホンイノシシが海外の観光客が持ち込んだウイルスに汚染された豚肉などの食材を何らかのルートで食べたことが豚コレラ発生の原因ではないかと強く疑われています。旭山動物園にも多くの観光客が訪れます…。豚コレラはイノシシ科の動物以外には病原性はありませんが、イノシシやブタは「怖い動物」と言った精神的な壁ができないか心配です。

旭山動物園 園長 坂東 元