ゲンちゃん日記・平成29年2月「動物の死と春に向かって始まる命」

最終更新日 2017年2月20日

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ゲンちゃん日記・平成29年2月「動物の死と春に向かって始まる命」

ワピチのサチ
1月に亡くなったワピチの「サチ」


 


1月も下旬に入り厳冬期ではありますが、恋の季節でもあります。寒いところで生活する動物は、子育ての条件が良くなる春から初夏にかけて出産期をむかえます。ほ乳類の場合妊娠期間から逆算をすると交尾の時期が決まってきます。たとえばエゾシカの妊娠期間は約230日、ニホンザルは約180日、キタキツネは約60日、エゾリスは約40日…交尾期は前年の秋から真冬にかけての種がほとんどですね。例外的にオコジョやエゾクロテンなどのイタチの仲間は春から初夏にかけて交尾をして来春に出産をします。実際の妊娠期間は約4週間なのですが着床遅延と言って受精卵が着床をしない状態が長く続きます。例外と言えばヒグマもそうですね…


そうそう、大型のオジロワシやシマフクロウなどの鳥類も抱卵期間が長いので、今時期がペアリング、巣作り、産卵の季節になります。
動物園ではレッサーパンダや大型ネコの仲間は今時期から本格的な恋の季節になります。昨年はアムールトラ、ユキヒョウと繁殖に成功した「もうじゅう館」。今年はアムールヒョウの繁殖に取り組んでいます。順調に繁殖しているレッサーパンダ、実は交尾の確認ができていませんでした。前のペアーだと2月頃になると独特な声で鳴き合い、追いかけっこをしたり、交尾も目撃できていたのですが、今のペアーは放飼場ではとてもクールな関係なのです。今年は交尾の確認もして、ホルモン動態なども含めた本格的なレッサーパンダの繁殖生理の解明に取り組みを始めました。
そういえばアビシニアコロブスの赤ちゃんも順調に成長しています。生まれた時は真っ白な赤ちゃん、ぜひ観て欲しいのですが、お披露目の春には大人と同じ色合いに…前回も冬期間の出産…でも元気が一番です。


一方で悲しい出来事もありました。特にワピチ(サチ♀)の死亡(1月10日)です。
サチは31歳、異例なほどの長寿でした。昨年から前肢の変形が顕著になり歩くのも不自由になってきて、座ったり横たわる時間が長くなり床ずれ(褥瘡)ができたりと老衰に伴う状態は進行していたのですが、体調は良く病気知らずでした。昨年暮れから、補助をしないと起立できなくなり、目に見えて体力が衰えてきました。1月10日の夕方近くに眠るように死亡しました。まさに大往生でした。旭山でのワピチの飼育の歴史は終わりとなりました。


春に向かって今年はどんな命の物語が始まるのでしょうか?キリンの結、カバの旭子も繁殖可能年齢になります。