平成17年4月 「うれしいことと残念なこと」

最終更新日 2005年4月29日

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3月16日あざらし館で初の赤ちゃんが誕生しました。
母親のガルは3年連続で繁殖成功です。

でも去年までは出産、子育てにはとても神経質でした。
放飼場の隅っこで出産しこどもをガードするように横たわり、
僕たちや他のアザラシが近づくと威嚇してきました。
ガルが子を残してプールに入ることなんてありませんでした。
ガルに限らず今まではずっとそうでした。

ところが今回は違いました。
僕たちがこどものすぐそばに行っても、
こどもが「ンガァー」と鳴かない限り威嚇してきません。
それどころか授乳が終わるとガルはプールに入ってリラックスしています。
さらになんとこどもがよく泳ぐのです。

生まれた次の日には数メートルも潜ってしまいました。
上から見ていて「溺れた!」と焦ってしまいました。
臍の緒をひらひらとなびかせながら上手に泳ぐのです。
寄り添うようにガルが見守っています。
こどもが疲れるとガルが促すように上陸します。

野生のアザラシの赤ちゃんは流氷から流氷へと泳いで渡ると聞いていたのですが、
それは例外的なことなんだとうちのアザラシを見ていて思っていました。
でも、本当は違ったんですね。
安心できて、のびのびできる環境があるとこんなにも変わるのかと、
あざらし館をつくってよかったなぁと感じました。

さて、正直イヤな話です。
今年度、野鳥など傷ついた野生動物の保護は上川支庁が行うこととなり
旭山動物園では傷ついた野生動物の保護は行えなくなりました。

平成9年、傷病野生鳥獣に対して責任的な立場にある「道」から、
傷病鳥獣保護ネットワークを構築するから、
委託契約を結んでくれないかとの依頼がありました。

以前から保護活動はボランティアで行っていましたが、
旭山動物園は本来の責任官庁である「道」がしっかりとした方針の下、
主体となり行うべきことであると主張してきました。
契約内容は非常に未熟でしたが、
「今後問題点を改善しながらよりよい内容にしていこう」ということで契約に踏み切りました。

本来はそれぞれが役割を分担してよりよい内容になっていくはずでしたが、
結果としては動物園の負担だけがどんどん重くなっていきました。
問題点は増えていったのですが何年経っても改善されません。

こちらの主張は受け入れられず、
一方的に「今年度も今までどおりの内容で委託契約をするか」と言われ
「受け入れられない」との回答に到りました。
我慢にも限界があります。
従って旭山動物園はネットワークからはずれてしまったので
傷病野生鳥獣の保護を行うことができなくなってしまいました。
傷ついた野生動物を保護したら上川支庁に連絡をして下さい。
とても残念です…

                 

                    アザラシ

                  画:ゲンちゃん