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旭山動物園からの手紙


旭山動物園からの手紙 85 〜動物園での悲しい出来事 パート1(平成9年5月15日号)
 旭山動物園ができて今年で30年になります。この間たくさんの動物が生まれ、たくさんの動物が死んでいきました。30年前の開園当初から飼育されている動物は、カバのゴン・ザブコ夫婦、ミシシッピーワニの3頭、アネハヅルの2羽だけとなりました。
 飼育係の仕事には、動物の生と死が必ず付いてまわります。動物が生まれたと喜び、死んだと悲しむ日の連続です。私が飼育係になって間もないころ、カリフォルニアアシカ2頭を一度に死なせたことがあります。夏の暑い日に、プール掃除のためアシカを陸に上げていた20分くらいの問に、2頭とも熱射病にかかってしまい、あっという間に死んでしまいました。私の不注意が原因でした。27年も前のことですが、今でもはっきりと思いだします。自分の未熟さが悔しく、アシカには申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 長期間、治療を続けた動物もいました。2年間、毎日治療を続けたニホンツキノワグマ。徐々に体力が弱りながらも必死に生きようとして、ついにカ尽きた日、私は残念に思う反面「これで毎日の治療から開放される」と、ホッとした気持ちがありました。しかし、獣医のK氏の目には涙があふれていて、無念さが感じられました。
 たとえ動物園で生まれた動物でも、病気やけがを人やほかの動物の前では見せません。弱みを見せることは、ほかの動物から攻撃を受けることを知っているからです。私たち飼育係でも、動物の具合が悪そうだと見えたときには、相当悪化している場合が多いのです。シベリアオオカミのジョンは、朝、放飼場に向かう途中でバッタリと倒れました。異常な倒れ方に、相手がオオカミであることも忘れ、檻の中に入り体を揺すってみたが、息絶えていました。(次号へつづく)



旭山動物園からの手紙 86 〜動物園での悲しい出来事 パート2(平成9年6月15日号)
 昨年の春、アジアゾウの「アサコ」が逝った。推定年齢58歳という国内では1・2位を争う長寿のゾウだった。年明けとともに食欲、元気もなくなり治療を続けていた。「アサコ倒れる」の一報が入ったのは3月30日午前2時のことだった。すぐ飼育係が集合し、アサコを起こそうと試みた。しかし、今まで休むときも寝るときも一度も横になったことのないアサコに立ち上がる気力はなくなっていた。つり上げて立たすことは可能だろうが、4トン近い体重のあるアサコの苦痛は計り知れない。「最期くらいは横にさせてゆっくりと休ませてやろう」というのが全員の考えだった。その後、アサコにしてやれることは口に水を含ませてやるくらいだった。4月2日午後11時ころ、アサコは苦しむこともなく静かに息を引き取った。
 これら死亡した多くの動物たちに対し、動物園職員有志が毎年7月のある日、園内にある動物慰霊碑に集まり慰霊祭を行っている。早朝だというのに毎年多くの職員が参加している。
 動物園では、これからも多くの動物たちが生まれ、また死んでいくことだろう。私たち飼育係は、一喜一憂しながら動物たちが1日でも長生きし天寿を全うしてくれることを願いながら、今日も仕事を続けている。
 家庭でペットを飼っている方、また、これから飼おうとしている方も多いと思う。一度餌を与えたからには最後まで面倒をみてください。大きくなってしまったからとか、死ぬのが嫌だからとかいって捨てることは絶対にしないでください。ペットも家族の一員として育てたからには、そのペットが死ぬときは家族全員で見届けてやるべきでしよう。


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