平成18年の設置当初から神居・江丹別地域包括支援センターのセンター長。 社会福祉士、精神保健福祉士
市内で65歳以上の方は平成23年7月末現在9万1千274人で、総人口の25・9%を占め、65歳以上の一人暮らしの方も増えています。こうした中で、社会から孤立して、誰にも気付かれずに死亡し、長時間が経過してから発見された、いわゆる「孤立死」が市内でも起きています。
孤立する高齢者が増えている現状について、神居・江丹別地域包括支援センターのセンター長、林和典さんに話を聞きました
「私の地域でも孤立死に至った方が居ます。でも、誰も責めることはできません」と林さんは沈痛な面持ちで話します。
「高齢者の中には、自分自身の健康や身の回りのことに関心を持てなくなって自己放任に陥る人が居ます。物が散乱した部屋の中で、何日も入浴せずに同じ服を着続けている。AさんもBさんもそのような状況だったのでしょう。こうなると孤立死に至る危険が高まってしまうのです」
「AさんもBさんも、それまでの人生の中で、家族との信頼関係や絆を十分に築くことができなかったという個人的な背景が見えます。日頃から誰とも話をしない、困ったときに頼れる人が居ない、友人や近所との付き合いがない、家族との関係が希薄だという人が、自ら心を閉ざしてしまう傾向が強いように感じます。Bさんはおむつに排尿しなければならない状況でも、誰かに支援を求めることはしなかったんです。SOSを発しない人をどう見付けるかも課題です」と林さんは話します。
市内で誰にも気付かれずに亡くなった61人のうち、39人が男性でした。男性の方が多い現状には、何か背景などがあるのでしょうか。
林さんは「今は職場と住居が離れているのが一般的です。特に男性の場合は職場が生活の中心になり、地域との接点を持ちづらいという傾向があります。また今は、人と話をしなくても生活に支障が生じない社会です。スーパーの買い物でも、駅で切符を購入するときでも、誰とも話さなくても用事を済ますことができます。でも、誰とも関わらずに日々を過ごすことが、果たして快適でしょうか。以前話題に なったテレビ番組の中で、職を失ったタクシーの運転手が『人とのつながりがなくなったら、自分は存在しないのと同じだ』と語っていた言葉が心に残っています」と話します。
「孤立していると思われる人が周りに居たら、まず、その人に関心を持ってほしい」と林さんは強調します。「心を閉ざして人との関わりを拒んでいるように見える人とも、細い糸でいいからつながっていることが大事です。少しずつ相手との信頼関係を築いていくうちに、徐々に心を開いてくれた人が私の地域にも居ます。孤立死を防ぐには『家族でなくても、誰かとつながっている』という実感を持てるような社会にすることが、最も大切です。地域の一人一人が誰かを見守っていて、それをつなげていくのが、地域包括支援センターや市、社会福祉協議会などの役割だと思います。支援センターは市内に9か所あるので、気になる高齢者が居たら、近くの支援センターに気軽に相談してください」とメッセージを送ります。
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住民の意識は変化している「『うちは大丈夫なので放っておいてほしい』と言う方も居ます」と話すのは、民生委員を19年間務めている鵜飼 力さんです。 「民生委員は、高齢者を含め地域の皆さんの生活実態や要望を把握し、行政に伝える橋渡し役です。しかし、個人情報を出すことを嫌がる人が多くなりました。例えば、地域に高齢者が何人居るか把握しようとしても、家族構成などを教えてくれない世帯もあります。こうなると、私たちはそれ以上立ち入ることができません。民生委員には守秘義務があり、個々の情報は決して外へは漏らさないので、信頼して情報を提供してほしいです。民生委員が地域の細かな状況を把握し、行政と密に連携することで、高齢者の孤立を防ぐ大きな力になることができると思うんです」と鵜飼さんは思いを込めて話します。 |
緑が丘地区の「ふれあいサロン」に集う皆さん
地域に孤立していると思われる高齢者が居ても、その人のために何をしたら良いかと悩んでしまうかもしれません。しかし、今、地域では、様々な組織や個人が高齢者を支える活動をしています。
孤立しがちな高齢者のために地域でできることを考えようと、住民福祉懇談会を設置した地域もあります。また、地域の福祉活動を推進する社会福祉協議会では、近所の人たちの交流の場である「ふれあいサロン」を設けている他、訪問や電話などで一人暮らしの高齢者等の安否確認を行っています。高齢者宅の除雪のボランティアをしている高校生も居ます。
安否確認や除雪を行っているボランティアの方に話を聞きました。
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様子を見て声を掛け、訪問します安否確認を担っています佐藤フミさんは、地区社会福祉協議会のボランティアとして、一人暮らしの高齢者の安否確認を行っています。 「マンションに住んでいる80歳代の女性の様子を見ながら、『元気にしてる?』と声を掛けたり雑談したりしています。私の家から彼女の家の玄関が見えるので、今日は元気に出掛けたなとか、しばらく姿が見えないけど大丈夫かな、などと気に掛けています。相手がわずらわしく感じないように、タイミングを見計らって声を掛けるようにしています。私も80歳ですが、少しでも人のお役に立てることがうれしくて、50歳頃から色々なボランティアをしてきました。これが私の元気の源かもしれません。これからも元気な限りずっとボランティアを続けていきたいと思っています」と、若々しい笑顔で話す佐藤さんです。 |
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今年も除雪に行きます「孫みたい」と言われてうれしい旭川商業高校野球部員は「旭川市福祉除雪サービス」の提供会員に登録し、冬期間の毎週土・日曜日に高齢者宅の除雪をしています。 2年生の古川祐輔さんは1年生のときに希望して、80歳代の女性宅の除雪をしました。「朝8時30分に行って、30分くらいかけてきれいに除雪します。いつも『本当の孫みたいだ。ありがとう』とすごく喜んでくれます。それがうれしかったです。お年寄りが一人でするには大変なことが色々あるから、周りで助けてあげないと」と思いやります。 |
高齢化はますます進み、高齢者の暮らし方や要望も多様化しています。そうした中では、公的な支援やサービスだけでは、一人一人の高齢者が求めることに対応できないのが現状です。だからこそ、高齢者も地域でどのように暮らしていくかを、自分たちで考えて実践していくことが求められています。
93歳で一人暮らしを続ける木村隆雄さんに、心構えなどについて聞きました。
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若い人も、やがては高齢者になるんです人は一人では生きられない木村さんは元気の秘訣を「常に栄養や衛生面に気を付けることでしょうか」と話します。 「人は一人では生きていけません。みんな欠点があるからこそ、助け合わなければなりません。若い人の中には高齢者に対する配慮がない人も居ますが、いずれは自分も年を取り、支えが必要になるときも来るということに気付いてほしいです。隣に誰が住んでいるか知らない人も居るといいますが、私は人とのつながりを大事にしたいですね。うちには毎日、近所の人などが来てくれます。火の元には特に気を付けているし、自分で工夫して玄関前にライトを付け、ライトの点滅をSOSの合図にしています。近所の人にもライトが点滅したら来てくれるようにお願いしています。このままこの地域で暮らしていければ幸せです」と背筋をぴんと伸ばして話します。 |
誰もが等しく年齢を重ね、やがては高齢者と呼ばれる存在になります。高齢期をどのように過ごすのか。それは、個人の希望や意志だけでは決定できない、様々な要因が絡んできます。また、家族と一緒だから幸せとは限らないし、一人暮らしだから不幸ということはありません。ただし、一人で居るのが好きだという人は居ても、社会から孤立することを望んでいる人は居ないでしょう。「自分を気に掛けてくれる人が居る、見守ってくれる人が居る、誰かとつながっている」と感じることができれば、人は安心して生きていけるはずです。
高齢者が孤立せず安心して暮らしていくために、地域は何ができるのか、どうあるべきなのか。そして私たちはどのような心構えを持って暮らしていくべきなのか。高齢期を迎えた人にもこれから迎える人にも、今、そのことが問われているのではないでしょうか。
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