ヒトに近い類人猿?

最終更新日 2021年2月9日

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ヒトに近い類人猿?

 昨年11月に担当動物の変更があり、新たにオランウータンと北海道産動物の担当になりました、中野です。


 担当するオランウータンに(ちょっと)関わる話をしてみようと思います。


 オランウータンの仲間は分類上、我々ヒトに近い類人猿といわれる動物のひとつです。類人猿は他にチンパンジーの仲間、ゴリラの仲間、そして意外に思う方もいるかもしれませんが、テナガザルの仲間も類人猿です。類人猿(とヒト)に共通の特徴はいくつもありますが、一番分かりやすい点は尾が無いという部分です。これら類人猿はヒトに近い生物として知られていますが、よりヒトに近い順に並べていくとどうなるか。


チンパンジー
チンパンジー
ゴリラ
ゴリラ(台北市立動物園にて撮影)
オランウータン
オランウータン
テナガザル
テナガザル



 最も人間に近いのはチンパンジーの仲間(チンパンジーとボノボ)です。これは聞いたことがある方も多いと思います。次に近いのはゴリラの仲間です。その次に近いのがオランウータンの仲間で、その次がテナガザル科のサルたちです。この次までいくと、類人猿を通り越して尾を持ったサルたちになってきます。


 ではそもそも分類上、あるいは進化系統上、近いというのはどういうことかというと、それぞれの祖先を遡った時に共通の祖先に辿り着くのがより早い、ということです。これは家系図をイメージすると分かりやすいかもしれません。

 例えば、自分と兄弟がいたとして、家系図を遡っていくと出会う共通祖先は親(父母)です。いとこならば、祖父母の所で出会い、はとこの場合は曾祖父母のところで出会います。自分に近いのは(親や祖父母などの直系の祖先を除くと)兄弟、いとこ、はとこの順になります。これを生物種という大きなスケールで考えたものが、分類上の「近さ・近縁さ」だと思ってください。(あくまでイメージの話ですが)

 ヒトの祖先とチンパンジーの祖先を遡っていくとどこかで共通祖先に辿りつくわけですね。そしてその共通祖先のさらに祖先を遡っていくとゴリラとの共通祖先に辿り着くということです。オランウータンはその次ですね。

 さて、ヒトに最も近い生物はチンパンジーの仲間とお話しましたが、これには条件がつきます。それは「現在の地球上に生息する」という点です。

 この条件をつけないのであれば、ヒトに最も近い生物は「ヒトの直接の祖先」となります。先ほどの家系図でいうところの「親」にあたる種ということですね。我々ヒト、現生人類に至るまで、たくさんの種の人類が生まれて進化してきました。もしかしたら現生人類よりも後に生まれた種の人類もいたかもしれません。当たり前ですが、これらの他の人類たちの方が、チンパンジーより我々に近いですよね。

 しかし現在の地球で最も近い生物はチンパンジーです。なぜか。答えは簡単で、現生人類以外は全て絶滅しているからです。残っていた他の人類も諸説ありますが約1万年前から2万年前くらいの間に全て滅びた(逆にいうとそのくらいの時期まではいた)と考えられています。我々は多様に進化した人類の中の唯一の生き残りなのです。そのため我々に最も近い現生生物は、近縁の滅びた人類たちを全てすっ飛ばして、類人猿のチンパンジーになってしまうんです。

 こう考えるとあんまりヒトとチンパンジーって近くないな、3番目に近いオランウータンならなおさら遠いな、という気がしてくるかもしれませんが、極めて多様な生物全体から見ると、やはりヒトと類人猿はものすごく近いと言えます。捉え方次第ですね。


 今回は少しややこしい話をしましたが、様々な生物の祖先を辿っていくのはとてもおもしろいです。興味が出た方は色々調べてみてくださいね。


オランウータン・北海道産動物(草食系・野鳥系)担当:中野奈央也