【動物園動物の死とは (2)】

最終更新日 2017年11月12日

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しいくのぶろぐ【動物園動物の死とは (2)】

 

10月4日のパックに続き、11月1日にアムールトラののん、7日にライオンのライラ。もうじゅう館では3件の訃報が続きました。

 パック19才、のん21才、ライラ21才。年齢も近いので、同時期に寿命を迎える可能性も想定してはいましたが、まさか1カ月ほどの間に3頭立て続けに逝ってしまうとは・・・

 空になった寝室を見ると、さすがに寂しく感じられます。

のん

<写真1> のんの死に顔は安らかでした。


 園にはみなさんからのお花が届いています。送ってくださった方々、ありがとうございます。Facebookにもたくさんのコメントが寄せられており、みなさんの3頭に対する思いが伝わってきます。

 3頭とも、もうじゅう館を代表するような存在でした。

花 

<写真2> もうじゅう館裏ですみませんが、飾らせていただきました。


 命には必ず終わりがある。寿命を全うしての死はあってはならない事ではなく、自然な事です。飼育係は動物の死に対して、一般の方よりドライに受け止めている部分があるかもしれません。

 ただ、ぼくがもうじゅう館で動物の誕生と死を両方見守ってきて、思ったことは・・・

 

 アムールトラが繁殖した時の喜び。ぼくにとってキリルとザリアのペアと、その子どもたちソーンとナージャは特別な存在です。

同じように、ライラやのん、パックが生まれた時にも、それを見守る飼育担当者がいて、ぼくと同じように感動を受け、彼らを特別な存在と感じた事でしょう。

 もうじゅう館担当はぼくで4代目になります。動物たちの成長や繁殖を見守ってきた前任者たちから命のバトンをリレーして、ぼくがアンカーになった、というわけです。

  

 ライラ・のん・パックには、来園者や職員、多くの人の思い入れがある。その人たちの思いも受けとめ、最後までしっかり看取ってあげよう、ということは意識しました。「最後を看取ってくれたのがあいつ(大西)でよかった」そう思っていただけたら幸いです。

 ライラ

<写真3> ライラは立てなくなっても最後まで飼育係を威嚇し、百獣の王の威厳を捨てませんでした。


 

 3頭それぞれの容体が悪化してきた時、獣医3人や園長と、今後どんなケアができるのか、さまざまな話し合いをしました。

正解がひとつではない事なので、獣医3人にもそれぞれの考えがあったり、もうじゅう館の設計者でもある園長の、ライラやのんに対する思いの強さも知りました。ぼく自身も担当動物の死について、考えさせられたり、ときには考えが揺れることもありました。

 「猛獣はどのように命の終わりを迎えるのか」「それに際して飼育係(獣医)はどう向き合うべきか」。3頭が最後に教えてくれたことを、職員それぞれが糧として、今後の仕事に活かさなければならないのだと思います。

(もうじゅう館担当:大西 敏文)