ゲンちゃん日記・令和3年1月「動物の子が起こした想定外の出来事」

最終更新日 2021年1月12日

ページID 072399

印刷

ゲンちゃん日記・令和3年1月「動物の子が起こした想定外の出来事」

レッサー

 (元気いっぱいの蓮蓮) 

   新年を迎えました。この手紙を書いている12月時点では、1月になっても「明けましておめでとう」と言える状況ではないのでは、と想像しています。旭山動物園では元日にインターネットによる生配信を実施していたはずです。皆さんは、どのように新年を迎えたでしょうか?
 動物たちにとっては、いつもと変わらない日常が続いています。キングペンギンたちも元気に散歩し、冬を満喫しているでしょう。
 レッサーパンダは今シーズンも繁殖に成功し、元気に育っています。成長過程の体重と筋力のバランスによるものだと思うのですが、繁殖した子は、成長とともに想定外の出来事を起こすことが多いです。先日、レッサーパンダの蓮蓮が、放飼場と観客の間にあるコンクリートの堀に落ちてしまったのですが、自力で壁を登り、放飼場に戻りました。堀に落ちたり飛び降りることは想定済みでしたが、壁を登って観客側に出ることができるというのは想定外でした。現場を見ていた人の話によると、壁の隅に両手両足を掛け、体を横にしたり、手足を広げて体をくねらせながら登ったようです。コンクリートの壁は打ちっぱなしなので、表面には深さ2ミリメートルほどの丸い穴や細かい溝があります。そこに爪や手と足を引っ掛けて突っ張り、体の柔軟性を生かして登ったのだと思います。ロッククライミングとボルダリングの合わせ技「コンクリートクライミング」です。レッサーパンダは、手の平だけではなく後足の平も返すことができるので、他の四足歩行の動物と比べて異次元の行動能力があるのです。翌日、コンクリート表面の穴と溝を埋めました。同じ景色でも、それを見る動物によって、全く別の景色に見えているのだなと感じました。
 動物たちと同じように、人類も明るい春を迎えられるように踏ん張りましょう。

令和3年1月12日 

旭山動物園 園長 坂東 元