ゲンちゃん日記・令和2年7月「保護動物の親代わりとして」

最終更新日 2020年7月14日

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ゲンちゃん日記・令和2年7月
「保護動物の親代わりとして」

子きづね

(写真:子犬と間違われて保護されたキタキツネ)

 6月も下旬になりました。来園者数が減り、動物と向きあう時間が増えました。思い起こせば、昔は動物たちの感情の動き方や体の使い方、行動の特徴など、様々なことを発見・想像できていたように思います。

 自分が旭山動物園に配属された当初、飼育動物の半分近くが傷病鳥獣、いわゆる保護動物でした。様々な原因で持ち込まれるので、救命することすら困難な場合が多かったです。知らないことが圧倒的に多く、身近にいる動物のことすら分からないという事実に愕然とする連続でしたが、やりがいもありました。中でも、保護された幼獣や幼鳥は、育てるのに時間も手間もかかります。親がいなければ生きてはいけないので、親代わりになるしかありません。人が育てても、親離れの時期に距離を置くと、同種の個体と同居や繁殖までできるようになります。この過程で大事なのが、じゃれて遊んだりといった無邪気に感情を出せる関係性をつくることです。強制的な給餌や給餌だけの関係だと、成長してから自咬症になったり、人や同種の個体に対しても異常な攻撃性を持ったりします。種としての行動以前に、感情をコントロールできるように成長させなければなりません。これは哺乳類だけではなく、群れで生活する鳥類でも大切なことです。

 5月の閉園期間中に、捨てられていた、目も開いていない子犬を拾い、育てていた人がいました。目が開いた頃に「もしかしてキタキツネでは?」と動物園を訪ねてきたので、調べてみるとそうでした。個人では飼えないし、自然に帰す選択肢はありません。当園は現在保護動物を扱っていないのですが、引き取りました。今も順調に成長しており、改めて身近な野生動物の素晴らしさを感じています。旭山のエゾシカやヒグマなど北海道の動物たちの飼育も、始めは保護個体からです。今だからこそ、多くの方に身近な動物について関心を持ってほしいです。

令和2年7月10日 

旭山動物園 園長 坂東 元