ゲンちゃん日記・令和2年3月「親子の様子をモニターでご覧ください」

最終更新日 2020年3月20日

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ゲンちゃん日記・令和2年3月「親子の様子をモニターでご覧ください」

カバの子ども

(写真:カバの子ども)

 もう3月です。雪解けはどこまで進んでいるのでしょうか?新型コロナウイルスによる影響はどのような状況になっているでしょうか?それにしても国によって対応、対策の程度が異なるのも気がかりな点です。客観的に見て日本の対応は緩いのですが果たしてどのような経緯をたどることになるのでしょうか…。

 園内の動物たちは平穏な日々を過ごしています。今年は1月のカバに続いて2月にはアムールトラが出産し現在3頭の子を育てています。カバの子の育児成功は旭山動物園では27年ぶりの出来事です。当時は見ている時しか親子の行動は確認できなかったのですが、今回は24時間の行動を録画映像で確認できました。

  動物園で飼育している動物の多くは野生種の動物ですから一生の中で最も無防備な状態になる出産は最も神経質になるときでもあるのです。動物園は外敵のいない安全を保証している環境なのですが、良くも悪くも利害関係のある飼育スタッフが唯一神経をとがらせる対象になります。この点では来園者の方が下位になります。ですから我々スタッフにできることは、いかに動物が落ち着いて出産、育児を行える場所だと判断できる環境を用意できるかということになります。もちろん出産に立ち会うと言うことはありません。昔は出産それに続く育児の課程はブラックボックスである場合が多かったのです。特に産室の中で出産する肉食動物の場合、生まれたことは耳を澄まして鳴き声確認、何頭いるかは巣箱から子供が出てきた時といった具合でした。動物を繁殖させる技術は飼育スタッフの経験やセンスがものをいう職人技のような世界でした。

  今は、育児放棄など繁殖の失敗事例も含めつぶさに検証することができます。客観的な情報を共有し出産環境の改善や飼育スタッフの導線の検討などを行うことができます。経験の見える化とでもいいましょうか。

 カバのアサコは一昨年も出産しています。このときは出産後数時間で子が死亡しました。解剖の結果体重も軽く、蹄が体重を支えられるまでに生育していない未熟な状態だったことが原因だったのですが、出産の経過は録画を見ることでつぶさに検証することができました。このときの経験を踏まえて今回の出産に臨みました。出産はまさかの午前10時過ぎで飼育スタッフがかば館屋内展示プールの水中掃除まっただ中で慌てたのですが、その後は産室から扉を隔てた作業室内のモニターで親子の様子を落ち着いて観察でき12時過ぎに子が上陸、16時過ぎに授乳確認となりました。

  カバもトラもお披露目はまだいつになるか分かりませんが、どちらも産室での親子の様子をモニターで見られるようにしていますので是非ご覧ください。

旭山動物園 園長 坂東 元