ゲンちゃん日記・平成31年4月「オランウータンのリアンの死」

最終更新日 2019年4月14日

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ゲンちゃん日記・平成31年4月「オランウータンのリアンの死」

リアン

(写真:次女のモカを抱くリアン、3月6日死亡)

 様々なことが新たに動き出す新年度を迎えました。想定もしなかったことが起きた昨年度、今年度はどのような年になるのでしょう。

 ゴンタ、マリ、旭姫、釧太郎、モモ、そしてリアン。現在のオランウータン舎で命を終えたヒト科の動物たちです。皆さんの心の中にいるのはどの個体でしょうか?ニシローランドゴリラのゴンタはエキノコックス症に感染し死亡しました。寄生虫が脳に転移していわゆる脳梗塞様の発作を繰り返しました。ゴンタと長年共に暮らしていたマリはゴンタが死亡した翌年突然死しました。明確な死因は究明できませんでした。ゴンタとマリは雌雄の関係になることはなく、子を残すことはできませんでした。

 ゴリラがいなくなった獣舎で新たにオランウータンの飼育を始めました。釧路から釧太郎そしてインドネシアから旭姫が来園し繁殖に向けた体制が整いましたが、旭姫が死亡しました。そして台湾からリアンの来園。すると今度は釧太郎が死亡しました。リアン順調に成長し平成13年に空中散歩と呼ばれるようになった新施設での主役となりました。その翌年ジャックが来園し次の年に長女モモが誕生しました。リアンは出産時育児を放棄しましたが、飼育員がリアンの乳首に子供を吸い付かせる介添え保育をすることで、見事母親になりました。モモ誕生の四年後長男モリトの誕生、最初から育児ができました。モモはまだまだ子供でしたが弟モリトの面倒を見て母リアンの育児のサポートをしていました。何もかもが順調に思えた矢先にモモが事故死。モリト誕生から8年後に次女のモカの誕生。大人になると単独で生活をするオランウータン。最近ではリアンとモカ、ジャックそしてモリトが寝室でも放飼場でも別々に暮らしていました。

 3月6日リアンの死は突然でした。解剖時所見ではくも膜下出血を認めました。

 モカはまだ数年は母親と共に過ごす年齢ですが比較的精神的な親離れが早く、母親の顔色をうかがうことなくグイグイと自分のペースで行動する傾向が強い個体と言うこともあってか、現在はリアンの死で大きく体調を崩すこともなく毎日を過ごしています。ただしオランウータンとして生きていく上で、例えば出産育児、オスとの間の取り方など、まだまだリアンから学ばなければいけないことは多くあったはずで、今後様々なケアをしながら成長を見守っていかなければいけません。

 それぞれの獣舎で数え切れない誕生と別れを積み重ねています。

 一つでも悔いを減らせるよう日々を大切にしなさいと改めてリアンに教えられました。

旭山動物園 園長 坂東 元