ゲンちゃん日記・平成30年5月 「目覚めよ!眠っている本能や能力」

最終更新日 2018年5月20日

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ゲンちゃん日記・平成30年5月 「目覚めよ!眠っている本能や能力」 

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 (写真:近隣の田んぼにいるハクチョウ)

 今は4月上旬で閉園期間突入です。異常な勢いで雪解けが進んだかと思えば、冬に逆戻りとなんだか落ち着かない気候です。とは言え旭山のすぐ下の田んぼの雪解けも進み多くのハクチョウが羽を休めています。少し昔までは4月の下旬の光景だったので、春は確実に早く訪れるようになりました。
 雪解けと共に花粉症の季節です。自分は今では花粉症などのアレルギーはたぶんありません。ウルシも大丈夫です。実はさかのぼることうん十年、大学生の頃酪農実習がありその時に牧草アレルギーが発覚しました。カモガヤアレルギーです。カモガヤは牧草のオーチャードグラスのことで、雑草としてもごく一般的ですね。毎日牧草の収穫作業だったのですが、腕には蕁麻疹、涙鼻水…作業は続き夜は咳で眠れなくなり、それでも朝3時過ぎには起きて、ウシの搾乳…でした。実習先は釧路方面で診療所も車で1時間以上と絶望的な状況でした。単位を取るためにまさに必死でした。動物園に就職して飼育作業で青刈りの牧草を触らずに過ごすことは不可能でした。実習から数年経ち忘れかけていたのですが、やはり激烈なアレルギー反応が出ました。コンタクトレンズはあきらめ眼鏡に変え、薬を飲むと眠気との戦い。先輩から「昔○○動物園で牧草アレルギーのやつがいて耐えきれずに退職した。退職後怪しい宗教活動にのめり込んだ、お前は頑張れ!」どう頑張るんだろう?牧草と縁のない動物の担当に変えてはくれないんだ?と思いつつ、とにかく動物のためにと働きました。なんと数年でアレルギーは治まったのです。
  人の世界ではアレルギー人口は増加しています。同じように伴侶動物いわゆるペットでも同じ傾向です。人の暮らし方の変化が原因の多くを占めると考えられていますからペットに関してはうなずける面があります。旭山動物園で飼育している野生種の動物たちは今のところ致命的なアレルギーは認められていません。人と暮らしを共にしていないこともありますが、将来は衛生概念や医療など共有することは増えていきますからアレルギーが問題になる時代が来る可能性はあると思います。 
  そういえば、30年前の動物たちと今の動物たちを観ていると野生の本質は変わらないけれど、いろいろな意味で丸くなってきているなと感じます。昔は野生個体やその2世の個体がたくさんいました。気迫、凄みが半端ではない個体がたくさんいました。今では飼育下で世代を重ねた個体が大半を占めます。安全と食べることを保障され続け世代を重ねています。
 だからこそ、眠ってしまっている本能や能力を少しでも目覚めさせてやろう、そう考え試行錯誤の日々が続きます。

  

 旭山動物園 園長 坂東 元