夏期開園から5月は雪のゴールデンウィークに始り、低温続きで桜の開花予想はズレにズレ、と思えば中旬には30度を超える猛暑が続いたりと、落ち着かない春でした。
そんな中、アムールトラの子は元気に成長しています。先日性別が判明しました。オスとメスでした。
母親のザリアも堂々としたもので、すっかり母親が板についてきました。
この手紙の頃には無邪気に転げ回る子供たちと、そっと見守るザリアの姿を皆さんにも見ていただけているでしょう。
旭山動物園でのアムールトラのペアでの飼育は、3代目になります。
昔の古い施設での「ハチ・ノーヒメ」、2代目は途中から現在のもうじゅう館に引っ越した「いっちゃん・ノン」。ノンは現在20歳になりました。
足腰も弱ってきましたがまだまだ健在です。この4頭は皆人工保育、ヒトに育てられた個体でした。
一般的に人工保育の個体は、その動物としての学習やコミュニケーションをとっていないために同居はできても交尾ができなかったり、出産しても育児ができなかったりと言った問題が起こることが多いのです。初代も2代目のペアも交尾ができませんでした。
メスに発情は来るのですが、お互いに特にオスがどのようにメスにアプローチしていいのかが分からないのです。
2代目の時は人工授精に取り組みました。
人工採精、凍結保存の技術などさまざまな知見を積み重ね、数回の人工授精を試みましたが、妊娠には至りませんでした。
そして3代目の「キリル、ザリア」です。両方共にアメリカの動物園生まれ、自然保育個体です。
旭山に来たいきさつは今までの場合とはちょっと違います。
アムールトラは昨年イルカ問題で話題になったWAZA(世界動物園水族館協会)が積極的に種の保存を行う重点種で、近親交配をできるだけ避けるペアーのコーディネートと言うよりも、現在世界中で飼育されているアムールトラの未来を考えて、新しい血統をつくっていくという視点からのペアーなのです。
ですからキリルとザリアをペアーとして受け入れ可能な園館を世界中から募り、旭山に来ることになったのです。
平成26年に来園し翌年の9月に出産、この時は環境にもまだ慣れていない中で、ペアリングから発情交尾とトントン拍子でことが進みましたが、出産から育児にはつながりませんでした。そして2回目の出産は4月8日。今度は見事育児につながりました。
前回の失敗を受けて、産室の大改造、落ち着ける環境作りに専念し出産に備えた結果でした。
担当者冥利に尽きる繁殖成功ですが、旭山動物園の歴史の中でも特別な繁殖成功になりました。