49回目の夏期開園を迎えました(ゲンちゃん日記特別版)
(イラスト「アムールトラの親子」BY:坂東 元)
49回目の夏期開園を無事に迎えることができました。
当たり前に今日があることに感謝しなければいけませんね。
そして毎日を大切にしなければいけません。
予期せぬ震災で熊本市動植物園はじめいくつかの動物園では日常が一変してしまいました。
動物たちも動物園もこれから長い苦労が続きます。
一日も早く日常を取り戻せるように私たちも支援をし続けていきたいと思います。
今回は、旭山動物園の中で掲示している旭山動物園からのメッセージ「伝えるのは、命」を書きます。
「動物園で地球一周の旅」
旭山動物園では、約120種620点の動物を飼育しています。
決して多い数ではありませんが、地元はもちろん、北極から南極周辺、
アフリカからアマゾンと地球上のさまざまな環境に暮らす動物たちを飼育しています。
旭山の動物たちを観ながら園内を一周すると地球一周の旅をしたことになります。
寝ているホッキョクグマをちょっと我慢して見続けてみてください。
呼吸のリズムを感じてみてください。
ふと見続けることができる瞬間が訪れます。
それが北極の時間の流れです。
それぞれの動物の時間の流れを感じたとき、その時間の流れを心地よく感じた時、
振り返って自分の時間の流れを思うとき、何が大切なのかにふと気づかされるのではないでしょうか。
「シンクグローバル アクトローカル」
私たちの暮らしは、地球上あらゆるところから豊かさを奪い続けることで成り立ってきました。
人間が文明を築いた8000年前に比べ原生林の8割が失われたと言われています。
森林の減少と共に多くの野生動物が絶滅し数を減らし続けています。
自然が失われる中ただ一種ヒトだけが数を増やし続けています。
私たちは生まれた環境の仕組みの中で生きること、共存することをやめた唯一の生きものです。
しかし地球そのものが病んでしまっては、私たちも生きていくことはできません。
私たちが奪っているもの、奪うことで数を減らす生きものたちの素晴らしさを知ること、
今気づき反省し行動しなければ取り返しのつかないことになります。
日常の中でほんの少しだけ優しくなること、できることはたくさんあるのではないでしょうか。
「旭山動物園 存在のこだわり」
とはいえ、動物園も人間のエゴで動物を閉じ込めている場所です。
動物園が人間の知的好奇心や癒やしや楽しさを追求するだけの場であってはいけないと考えます。
動物たちの本質的な素晴らしさを感じてもらうことで飼育動物と来園者をつなぐ架け橋となり、
動物園は飼育動物とその動物が本来暮らすふるさとを結ぶ、
架け橋としての役割を担うことに取り組まなければいけないと考えます。
旭山動物園は、
「ヒトも含めたくさんの命がかがやき続ける未来のためにできること」
を考え、実行していきたいと思います。
平成28(2016)年4月29日
旭川市旭山動物園 園長 坂東 元