新年早々、ドブラのロミが死亡しました。
ロミは父親が家畜のロバ、母親が野生種のシマウマの異種間雑種でした。
昭和45年生まれ、35才の大往生でした。
いつの間にか昭和42年の開園の頃から飼育している動物は、
カバのゴンとザブコ、アネハヅル1羽、ミシシッピーアリゲーター1頭だけになってしまいました。
ロミはとても気弱な面があって、何か具体的に頼るのではないのですが、
いつも他の個体に寄り添っていました。
生まれてからしばらくは父親であるロバに、その後はポニーに、
そして最後はフタコブラクダでした。
ロバでもなくシマウマでもなくその一生を終えました。
自然界ではあり得ない組み合わせでの誕生でしたから、
意図的に掛け合わせたわけではないにしろ、
今思うと旭山として決して自慢できることではありませんでした。
もう一つ、ビーグル犬の「ビー」。
旭山動物園再生のスタートである平成9年にオープンした「こども牧場」の
マスコット的存在として今まで頑張ってきました。
現在、約15才。
今年に入り急激に聴覚・視覚が減退し、運動失調も顕著になってきました。
顔も真っ白になり、もうおばあちゃんです。
もう、たくさんの人とのふれあいは負担が大きすぎます。
この手紙が届く頃には現役を引退をして、のんびりと余生を過ごしているかもしれません。
さて「ちんぱんじー館」です。
本格的な工事が始まりました。
いよいよ正念場です。
非常に厳しい財政状況の中で建築させていただくので
「建ててよかった」と言っていただけるものにしなければいけません。
次につながるものにしなければいけません。
今回、僕の中での大きなテーマは「不安定」と「好奇心」です。
サルの仲間は樹上を生活の基盤にしていますが、体の使い方は種によって様々です。
チンパンジーは両腕だけで枝にぶら下がるブラキエーションという行動ができます。
動物園でチンパンジーの動きを観察していると、
高いところでも地上と同じように構造物の上をナックル歩行で歩いている姿を頻繁に見ます。
ナックル歩行とは地面を歩く時に両手をグーにして地面につける歩き方です。
どうしてか?
地上10メートル以上の遊具を作るとなると、とても頑丈な安定した構造物となります。
高いところを怖いと思わないチンパンジーですから、
地上と同じようにナックル歩行になってしまうのです。
本来の樹上であれば木は揺れます。
そうすると必ず握る動きになりブラキエーションへと移行するはずです。
ロープを張って「ぶら下がる」のではなく、
構造体自体にぶら下がる動きを引き出す仕掛けを取り入れたいのです。
技術的に「不安定」な構造物が作れるのか、第1の課題です。
次に不安定な構造物が出来ても、利用されなければ意味がありません。
安全が保証されているので、地上でゴロゴロしている方が楽に決まっています。
どうやって高い場所に行きたくなるようにさせるか?
チンパンジーにヒトを観察させよう!
これが第2の課題「好奇心」です。
あっという間に夏が来そうです。