平成26年8月 「アミメキリン、マリモの死」

最終更新日 2014年8月30日

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 今年は、新たな命の誕生が続いていて、
9月にはキリンの誕生をひかえ、私たちも心待ちにしていました。
過去2回の失敗の反省をし、新しい施設での成功を目指していました。

マリモは右前足の蹄の形がやや片摩耗して変形していたのですが
これまでは特に悪化することもなく過ごしてきました。
昨年ころから変形が進行していたのですが、歩きにくそうにする
あるいは痛みを示す兆候はありませんでした。
靴の底が小指から踵にかけての側だけが
すり減った状態を想像してみてください。
足の底の面の傾きをくるぶしの関節で調整して
歩いているような状態だったのです。
今年の6月に入り蹄の底の傾きがやや大きくなり、
前足の私たちで言う手首の関節がやや外側に飛び出す形、
表現が難しいのですがO脚のような形になってきました。

そして6月下旬に関節の腫脹が始まりました。
キリンは脚立のように4本の足のバランスで立っています。
一本でもバランスを崩すと致命傷です。
8月下旬~9月の上旬に出産予定で胎児も大きくなり
母胎への負担も増してきます。
当然蹄を削って修正すればと考えるのですが、
キリンはとても神経質で警戒心の強い動物で、
マリモはヒトが近づくとライオンでも一撃で倒す
威力のある回し蹴りをしてきます。
当然麻酔をしてということになりますが、
麻酔を安全にかけるのが最も難しいのがキリンです。
麻酔がかかり倒れるとき、
麻酔から覚めてがむしゃらに立とうとするときの事故、
今回は出産間近の胎児がいること…
さらに一回の削蹄では解決しません。

麻酔は確率の低い一か八かに近い選択です。
マリモの状態は幸いに、
足をつけないなどの症状は伴っていなかったので、
胎児に影響しないように、
これ以上悪化しないような保存療法を選択しました。
投薬の効果があり腫脹は改善傾向で、
とにかく無事出産を目指していました。
ひとつ気がかりは雄のゲンキの態度でした。
マリモ依存症とでも言うのでしょうか、
とにかくマリモにまとわりつくのです。
首を打ち付けたり、体を預けたり、
マリモの足への負担を増す危険がありました。
マリモを隔離するとゲンキは放飼場を走り回り
ゲンキが転倒などの事故を起こしかねず、
同居をせざるを得ませんでした。

死亡当日、ゲンキがまとわりつく中、
マリモは右前足に負重することが困難な状態で
他の3本の足で体重を支えきれずに座り込むように倒れました。
ゲンキを寝室に収容しマリモのもとに駆けつけましたが、
首を持ち上げることもできず、吐いた物が気道を塞ぎ死亡しました。
解剖の結果、手首の関節面の骨折が認められました。
おそらく倒れる直前に右前足に過度の負荷が掛かる
何かが起きたと考えられました。

すべて結果論にしかなりませんが、残念でなりません。
北海道に行くからとマリモと名付けてもらい、
命をつなぐ環境が整い、これからという思いでした。
おそらくこの手紙が届くころには、
百吉のお嫁さんを迎える準備に追われていることでしょう。

毎日に悔いがなきよう前を向き続けていきます。