シンリンオオカミのケンの訃報
10月10日昼、オオカミの森で飼育していたシンリンオオカミのケンが死亡しました。
<経過>
先日のしいくのぶろぐ(「シンリンオオカミ ケンの展示を中止しています。(10月8日)」でお伝えしたとおり、10月2日の日中にケンが転倒し、展示場内の小川に転落しました(その後復帰)。さらにハエが下半身にたかっていたこともあり、閉園後に検査し、ハエの卵とウジの除去を行いました。
10月3日から、サブパドックでの群れとのお見合いを開始しましたが、徐々に食欲の低下と後肢のふらつきが目立つようになりました。
10月6日にレントゲンと脊髄造影検査を実施し、複数の腰椎間での変形性脊椎症(加齢による椎間板の柔軟性低下を補うために、骨と骨の間に骨棘(出っ張り)ができ、これにより脊髄(神経)が圧迫される病気)による後肢麻痺と診断いたしました。ケンは高齢で、また病変が複数の腰椎にまたがっていることから手術による治療は困難と判断し、ステロイドによる内科的な治療を開始しました。
10月7日からもサブパドックでの群れとのお見合いは継続しましたが、日に日に後肢の麻痺が進行し、補助による起立歩行になり、食欲も廃絶となりました。10月2日の転落前までは餌も多く食べており、上半身は動き、自力での飲水が可能であったため、飼育スタッフによるケアを継続していました。
10月10日も午前中に体位交換と飲水補助を行い、顔つきもしっかりとした様子でしたが、昼に死亡しました。
解剖の結果、肺と脾臓に腫瘍を疑う病変が見つかり、過去に手術した精巣腫瘍の転移があったものと考えられます。死因は多臓器不全による老衰と診断いたしました。
ケンは2007年5月1日生まれで、同年10月にカナダより来園しました。
メスのマースとの間に9頭の子が成育し、現在そのうち2頭は他動物園でペアを形成しています。
旭山動物園ではオオカミの森ではマースと子のノチウ、レラ、ワッカが生活し、バックヤードでは子のヌプリとペア相手のアオイが生活しています。
第一位オスのケンが亡くなりましたが、オオカミの森の群れの中では、ゆるやかに息子のノチウに第一位が移行し、今のところ大きな混乱なく過ごしています。今後も注意深く、観察をしていきます。