旭山動物園ヒストリー・その(4)

最終更新日 2016年2月24日

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リ・スタート 躍進の時代(平成9年から平成18年)

平成6年末、新しい旭川市長が誕生しました。
新市長は旭川の「顔」となる新施設として、当初は水族館建設を考えていたそうです。
しかし、不況の折、市には財源がありませんでした。折しも、旭山動物園は施設の老朽化で誰が見ても補修、リニューアルが必要でした。そこで平成7年初夏、園長を市長室に招き、どのような考えを持っているのかを聞くことになりました。
園長にしてみれば、長年門前払いどころか門にもたどり着けないような日々が続く中、市長に呼ばれるなんて、と思い、日頃から考え続けていた動物園構想を熱く語り続けました。会談は当初30分の予定が2時間以上にもなったそうです。
その熱意が実ったのか平成8年度予算で新施設「こども牧場」が建設されることになりました。
この「こども牧場」は、ヤギ、ブタ、ウサギ、アヒル、ニワトリなど、家畜やペットとのふれあいを通して、命を感じてもらう施設ですが、この年から導入した動物園パスポートと共に、何回でも来園し、休日の一日を動物園でゆっくり楽しむ人々が増加してきました。中には、休日すべてを皆勤したというご家族もいらっしゃったくらいです。
また、旭山動物園最初の行動展示施設「ととりの村」もオープン。そして、平成9年度は総入園者数306,255人となり、前年を45,000人も上回る結果となりました。
実際に数字として実績が上がってくると、市当局も「投資して良かった」ということになります。その後も猛獣たちの生息環境を再現した生態的展示施設「もうじゅう館」、ニホンザルたちの遊び心をくすぐり、観察者より高い位置に行けることでストレス解消を狙った「さる山」、ペンギンを水中から360度自由に観察できる「ぺんぎん館」、動物本来の持つ能力を十二分に発揮できる「オランウータンの空中放飼場」、ホッキョクグマの水中遊泳やダイビングなどを観察できる「ほっきょくぐま館」、北海道の漁港をイメージし、その中でくらすアザラシたちを表現した「あざらし館」、同一地域に生息する異種動物の共生を展示した「くもざる・かぴばら館」、チンパンジーがゆったりと群れで生活する様子を観察できる「チンパンジーの森」など、毎年のように新施設を建設し、今や入園者数は過去最低だった平成8年の十倍以上の入園者数となりました。
何がこの躍進の要因となったのでしょうか。
施設造りに当たって、動物本来の行動や能力を最もよく知っている飼育展示係が、自らの発想で動物たちが快適に過ごせる環境を考えたからではないでしょうか。そして、そのことを多くの皆さんが「旭山動物園もよくやっているよ」と評価してくださったからだと思います。さらに、旭山動物園の取り組みを熱心に報道してくれる報道機関の皆様がおられたことなど、旭川の多くの皆様の支援があったればこそだと思います。しかし、結局のところ、動物たちの魅力そのものが一番であることに間違いはありません。パンダはいなくても、コアラもラッコもいなくても、今、地球上に生きている動物たちすべてが奇跡の存在なのですから、そのすばらしさに差があるはずがありません。
「動物たちが全てを教えてくれる」というのは初代園長の言葉で、旭山動物園職員全員の実感なのですが、まさに旭山動物園は、動物たちに教えられたとおりの動物園づくりを心がけてきたつもりです。