旭山動物園の使命・理念

最終更新日 2016年2月24日

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旭山動物園の使命

1.レクリエーションの場

動物園では、人はみな笑顔で動物たちと過ごしています。
それはなぜでしょう。
オーストリアの動物行動学者 コンラート・ローレンツは 次のように言っています。
「動物を飼育したいという欲望は、太古から人間の心に潜む気持ちである。文化を持つようになった人間が、自然という 失った楽園に対して抱く憧れなのである」と。 

まさにレクリエーションとはリ・クリエーション(Recreation)人間性を再創造(回復)するという意味なのです。
動物たちと一緒の楽しい時間を過ごし、美しい動物たちのすばらしい能力に感動し、自らの「生」を実感できる場所、それが動物園です。

2.教育の場所

動物園では、貴重な野生動物を飼育展示していますが、その動物の「生命」そのものを通して、自然環境の多様性を実感できます。
また、動物園ガイドや動物教室、野外観察会、出張授業などを通して、野生動物たちが置かれた現状を知り、私たちの暮らしと彼等との関わりを学ぶことができます。

3.自然保護の場

動物園は、絶滅が心配されている動物たちを計画的に繁殖させることによって、動物種を保存することができます。
また、絶滅してしまった地域に、動物園で増やした動物を放して、再び野生の状態を回復させることもできます。

4.調査・研究の場

動物園には、比較解剖学、生理学、栄養学、繁殖学上の様々なデータが集まります。大学などの研究機関と共に、これらを集大成し、野生動物医学へと発展させています。
また、遺伝学的研究や小個体群管理学が、絶滅を心配される個体群の維持に役立っており、動物園の研究とフィールドの研究が一体となって野生動物の保護へ実効を上げています。
なお最近では、人獣共通感染症の研究も進めており、人と動物との共生への実現にも貢献しています。

旭山動物園の理念

当園では、飼育動物を「野生種」なのか、「家畜・ペット種」なのかで、人間との関わりかたの違う生き物として、飼育・展示を行っています。
家畜・ペット種は人間が長い年月をかけ野生種を家畜化し、改良を重ねて作り出した、人間たちの都合、ルール、価値観の中で生まれてきた生き物たちです。また彼等は飼い主がいてはじめて存在できる命です。
当園では家畜・ペット種は「こども牧場」で飼育・展示をしています。ここでは直接、動物との触れ合いを通して「命の温もり、命の尊さ」を感じて欲しいと考えています。

動物園で飼育している動物の大半は野生種です。
野生種は人間と全く異なるルール、価値観の中で生活する生き物たちです。それぞれが生息する環境の中で食べるもの、食べられるものが、狩り尽くすこともなく怯え続けることもなく見事に共存し、個でありながら環境という全体の一部として全ての種・個体が調和しています。人間はこの共存・調和の輪から外れて、独自の道を歩んでいます。今や人間が全ての生き物の運命を握っていると言っても過言ではありません。

野生動物の保護や環境問題、あるいは駆除を考える時、たとえカラス、スズメといえども、私たちと対等な生き物なんだとの認識を持つことから始めなければいけません。

当園では、ありのままの彼等の生活や行動、しぐさの中に「凄さ、美しさ、尊さ」を見つけ、「たくさんの命あふれる空間の居心地の良さ」を感じて欲しいと考えています。

ペット種のように触れ合う、可愛がる、芸をさせる、擬人的なポーズに価値を付けるといった切り口から、野生種への興味や関心を持ってもらうべきではないと考えています。

(『旭山動物園の動物園図録(改訂第2版)』巻頭より抜粋)