あさひばし 平成29年6月号「特集 市民と共にこれからも 私のまちの動物園」

情報発信元 広報広聴課

最終更新日 2017年6月15日

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市民の願いで誕生した動物園

旭山動物園が開園したのは昭和42年7月1日。それは、旭川市民が待ち望んでいた瞬間でした。

昭和39年、市では、子供たちが豊かな心を持って育ち、家族連れで楽しめる施設として動物園の建設を計画しました。

当時の旭川は人口が急増し、道路や上下水道、学校など都市基盤の整備が最優先で進められており、財源の確保が大きな課題でした。

市議会では、動物園の設置は時期尚早との意見もあって、大きな議論となり、徹夜で議会が開かれるなど、審議は難航しました。

そうした中、市民の間でも動物園の建設を望む声が大きくなり、多くの市民が建設資金を寄附するなど、市民ぐるみの運動になっていきました。

それだけに、市民にとって開園の喜びは大きく、一般開放の初日は5万3千人が来園。当時の人口は約26万人でしたが、開園1か月で、15万人超の人が訪れました。

それから50年。市民の声で生まれた動物園は、今では世界中から多くの来園者が訪れる場所になりました。これまでの歩みを振り返るとともに、市民にとっての旭山動物園の魅力を改めて探ります。

市民と共に、動物と共に歩んだ50年

50年の歩みを、簡単に振り返ります。

一人一人の胸に「思い出の動物園」があるのではないでしょうか。

図鑑で見た動物が目の前に!

開園当初、来園者は、図鑑でしか見たことのない動物たちの姿を見られることに満足していました。開園から10年間は、入園者数が40万人前後で推移し、地域の動物園として親しまれていました。

命を伝える取組みを

昭和51年にサマースクールを開始。以後、機関誌『モユク・カムイ』の発行、ワンポイントガイド、夜の動物園や冬の動物園観察会、もぐもぐタイムなど、早くから、動物の命を伝える取組みを実施。

入園者の減少と廃園の危機

昭和58年、過去最高の入園者数59万8千人を記録した後、入園者が徐々に減少。そして平成6年、エキノコックス発生で途中閉園。廃園もささやかれる危機に。

行動展示で一大ブームに

平成9年、「こども牧場」と、「ととりの村」をオープン。続いて「もうじゅう館」、「ぺんぎん館」、「オランウータン舎」、「ほっきょくぐま館」、「あざらし館」、「くもざる・かぴばら館」、「チンパンジーの森」などの行動展示を取り入れた新施設を建設。大きな反響を呼び、同18年の入園者は300万人を超え過去最低だった同8年の10倍以上となりました。

いつの時代も市民に支えられて

旭山動物園くらぶ、旭山動物園マイスターボランティアをはじめ、多くの団体や企業、そして市民一人一人に支えられ、50年を歩んできました。

動物園で過ごす時間

旭川生まれで旭川に住む、池野由似(いけの ゆに)さんに話を聞きました。

「月に4回は動物園に行きます。『今日は2時間だけ』、『夕方に行こう』など、好きな時間に行って、日々変化する動物の成長や表情を感じられるのが私たち市民の特権。時間を忘れてぼーっと観察できるのもうれしいです。

初めて動物園へ行ったのは、写真によると生後2か月です。自分の記憶は2歳のときで、母が作ってくれたおにぎりを背負って、正門から旧総合動物舎のゾウの所まで歩きました。母も、小学校の遠足で行った思い出があると言い、動物園が大好きです。幼い頃家族と過ごした時間は色あせることはありません。将来、自分の子供や、いつかは孫とも、動物園での思い出をつくっていくのが夢です」。

旭山動物園が伝えたいこと

広報誌に毎月掲載している「動物園からの手紙」でおなじみ、旭山動物園長の坂東 元(ばんどう げん)さんに、これまでの歩みを振り返りながら、動物園の理念や市民に伝えたいことなどを聞きました。

動物のすごさを伝えたい

僕が動物園に就職したのは昭和61年。開園から19年たって、来園者が減っていた頃でした。

動物は、自分の能力を自慢したり、アピールしたりしません。開園当時は、動物の姿・形に喜んでいた来園者が、徐々に動物を見飽きて、つまらないと感じていたんですね。動物はすごいし、面白い、それは絶対です。毎日接する僕たちが一番知っています。そこで、「動物のすごさを自分の言葉で話そう、お客さんに伝えよう」と始めたのがワンポイントガイドです。これを通して、それまで動物と向き合うだけだった飼育員に「自分たちが伝えるんだ」という意識が生まれました。今の旭山動物園の原点です。

真実を伝える

平成6年、ローランドゴリラとワオキツネザルがエキノコックスに感染して死にました。柵の破れ目からキタキツネが侵入したことが原因でした。ワオキツネザルは僕が解剖しました。メスを入れた途端に見えたエキノコックスの特徴的な症状。大変だ。公表しなければと、園長らと市長の元へ行きました。市長からは「公表したら旭山動物園は終わりかもしれない」と言われました。来園者が減り続けていたときです。当時の菅野 浩園長は「それでも、真実を伝えなければ」ときっぱり答えたのです。一時閉園後に迎えた翌春、来園者はさらに減少することになります。でも、エキノコックスについて市民に正しく伝え、理解してもらうことが重要でした。園内で起きたことをオープンにする、真実を伝える、この姿勢は今も変わっていません。同時に、この出来事は、キタキツネをはじめとする野生動物と人との関わり方を改めて考えるきっかけになりました。これは、動物を野生種と家畜・ペット種で区別するという今の飼育・展示の仕方につながっています。

命の温かさ、尊さを子供たちに

エキノコックス発生による一時閉園中、居ても立ってもいられず、子供たちが動物と触れ合える施設を造ることにしました。予算がなかったので、自分たちで生コンを流し、小屋を建て、他の動物園や市内の農家からウサギやヤギ、ヒツジなどをもらって。その頃は、身近な緑が急速に減り、昆虫などどこにでもいた生き物が周りに少なくなってきた時代。だからこそ、子供が人以外の命に触れられる場が必要だと考えました。

当時は来園者がさらに減り、どん底を迎えていました。けれど、動物に触れる子供たちの目は輝いていました。展示動物の命を通じて、生き物に対する感性や考え方が育ってほしいとの願いが実を結び、平成9年に16年ぶりの施設「こども牧場」がオープンします。

ただ自分らしく自由に

同じく平成9年には「ととりの村」が完成。以降、次々と新施設がオープンしました。こうして行動展示で全国に知られ、多くの人が訪れるようになったけれど、僕たちは、ありのままの動物の魅力を伝えたいと、できることをやってきただけです。動物たちは、旭山がどんな状況にあっても変わらずすごかった。

平成10年に「もうじゅう館」ができる前、閉園後のヒョウの放飼場は石ころだらけでした。夜行性で昼間寝ているヒョウに、来園者が石を投げるんです。何でこんなことをするんだ、と思うと同時に、自分たちはヒョウのすごさを伝え切れていないんだ、と憤りを感じていました。

もうじゅう館は檻を空中にせり出させ、人はその真下からヒョウを見上げて観察するようになっています。すると、ヒョウは変わらず寝ているだけなのに、来園者から歓声が上がるんです。それはなぜか。手を伸ばせば届きそうな所にいながら、ヒョウが伸び伸びとリラックスしているから。ヒョウは高い位置にいることで、人間より優位に立っていられます。あの空間では、彼らは圧倒的に強い。見上げた人は一瞬目が合っただけで、どきっと野生のすごみを感じる。飼育員の思いを来園者と共有できたと感じた瞬間でした。

その後の施設も同じ気持ちで造っています。ペンギンもアザラシも、ただ泳いでいるだけです。ただ、自分らしく自由に。

これらの施設は、地元の業者と一緒に動物たちを思い、来園者にいかに伝えられるかを考えながら、

造り上げています。これも、旭山動物園の特徴です。

旭山のこれから

生身の動物を目の前にしたときに感じる気高さや存在感。これからも、等身大の動物たちの素晴らしさ、そのままで輝く命の大切さ、ありのままの姿を伝えていきたい。そしてこれからは、旭山にいる動物たちのふるさとと、そこで生きる野生動物を守り、次世代につなぐために、動物園ができることは何か、もっと考えていきたい。

動物たちは、何百・何千年も変わらず、淡々と日々を生きています。彼らは、老いて死ぬと知っているから、命をつなごうとする。こうした動物たちの命を、生きる環境を、僕たち人間は知らず知らずに奪っています。

展示動物を通じて、動物園を入り口として、野生動物たちと僕たち人間が生きる自然環境にも目を向けてほしいと思います。

旭川に住む皆さんへ

旭川に住む皆さんなら、きっと旭山動物園との何かしらの思い出があるのではないでしょうか。50年という歳月は、子供の頃に来た人がやがて親になり、孫がいるかもしれない。そんな時間です。

例えば、幼稚園児が、今いるキリンの結と一緒に写真を撮る。子供のときは分からないけれど、大きくなって、おばあちゃんになった結を見て、子供の頃に動物園に行って結を見たことを思い出すかもしれない。もしかすると、結はもういなくなって、違うキリンがいるかもしれない。市民には、そうして長く動物たちと付き合ってほしい。それが市民にとって動物園の一番の楽しみ方だし、共に生きるということだと思います。50周年という節目の年に、ぜひ動物園に足を運んでほしいです。

市民ならこんな観察も楽しめます

動物園の職員が、一歩深く入って動物を観察したり、動物園を楽しんだりするヒントを紹介します。気軽に行ける市民だからこそ旭山動物園ならではのとっておきの楽しみ方ができるはずです。

群れの中の関わりをじっくり観察する

飼育展示担当の鈴木悠太(すずき ゆうた)さん「さる山には、今年生まれた赤ちゃんから29歳のおばあちゃんまで、現在、ニホンザルが65頭います。群れの中で、それぞれがどんなふうに関わっているのかを観察すると面白いですよ。気になるサルを1頭見つけて、長く追い掛けて見るのがお勧めです。他のサル類との動きの違いや、リニューアルで設置した円盤などを使う姿も見てください」

進化し工夫される展示を

飼育展示担当の白木雪乃(しらき ゆきの)さん「4月からクモザルを担当しています。日々飼育しながら観察し、どうしたら色々な能力や行動を見せてくれるかを考えています。先日、放飼場にヤナギの木を植えたら、すごく興味を持って、かじったり遊んだりしていましたし、日よけに付けた屋根では雨宿りしていました。環境を変えると動物の行動も変わるし、季節や天気、時間帯でも変わります。工夫して作った看板も、ぜひ読んでください」

地味といわれる生き物の存在に目を向ける

園内管理担当の鈴木達也(すずき たつや)さん「大きくて目立つ動物だけでなく、ひっそりと生きているような生き物にも目を向けてほしい。野生では、キリンとホロホロチョウなど多様な生き物が共生しており、お互いに大切な存在です。かば館に展示されている『ゲテモノたち』は必見。同じ地球上に生きる命として関心を持ってほしいです」

触れて、命の温もりを感じる

飼育展示担当の佐賀真一(さが しんいち)さん「こども牧場は、園では動物に直接触ることができる唯一の施設です。ウサギやモルモット、ヤギ、ヒツジ、アヒルなどがいます。動物の体を触ったとき、モコモコ、フカフカ、硬かったりと、それぞれ違う手触りや体温を感じて、皆さんニヤッとします。命の温もりが伝わったと思う瞬間です」

卵からひなへ、大人へ。ずっと成長を見守る

飼育展示担当・獣医師の佐藤伸高(さとう のぶたか)さん「ペンギンは、5月に盛んに繁殖行動をしていたので、6月頃は屋内放飼場で卵を温めている姿を見られるかもしれません。キングペンギンは雄と雌が交代で卵を足の上に載せて上からおなかの皮を布団のようにかぶせるので、おなかがぽっこりしているのが目印になります。約2か月後には、親が餌を与えるときにおなかの間からひなが見える可能性も。そして冬の散歩には、よちよち歩きで参加できるかもしれません」

その季節だけの姿を見る

インドクジャクの雄は、5月から6月の繁殖期に、飾り羽を開いて求愛行動をします。繁殖期が終わると美しく長い羽が抜け落ちます。いつ羽を広げるかはクジャク次第です。じっと待って見てください。

植物と動物の関係を知る

園内管理担当の半澤信昭(はんざわ のぶあき)さん「動物と植物の関係を知ってほしくて、手作りで植物の看板を作っています。例えば、絶滅のおそれのある希少種のヒメギフチョウの減少は、道内では卵を産み付ける植物のオクエゾサイシンが減ったから。園内で卵を産めるようにオクエゾサイシンを植えています。看板の説明を読んで、旭川の植物にも関心を持ってもらえればうれしいです」

図録を持って歩こう!

50周年を記念して『旭山動物園の動物図録』を全面改訂。園内売店で1,080円で販売しています。

動物たちの特徴や見所を、施設ごとに紹介していますので、ぜひご覧ください。

「私のまちの動物園」として

市民の声から生まれた旭山動物園は、50年の年月を1日1日重ねてきました。これまでも、今も、そしてこれからも、一番心強い応援団は市民の皆さんです。

これからも「伝えるのは、命」を世界に発信する「私のまちの動物園」を、市民の皆さんと一緒に大切に育てていきます。

【詳細】旭山動物園 電話0166-36-1104


開園50周年記念 7月の主なイベント

旭山動物園50周年記念誌の発行

7月1日(土曜日)から園内売店で販売 1,080円

開園記念日セレモニー

とき 7月1日(土曜日) 午前9時から9時30分まで

ところ 正門広場

市民の入園無料日

とき 7月1日(土曜日)・2日(日曜日)

補足:市民であることを示す証明書(運転免許証・保険証等)の提示が必要。

2日間は開園時間が午前9時30分から午後7時15分(入園は午後6時まで)。

他にもイベントがたくさん

この他、7月1日(土曜日)・2日(日曜日)の2日間では、50周年版マルチポイントガイド、動物慰霊碑の飾り付け、50周年記念クイズイベント、OBトークイベント、記念グッズ配布などを実施。詳細は旭山動物園のホームページで確認を。

中央図書館(常磐公園)の企画展示

旭山動物園~50年のキセキ

とき 7月1日(土曜日)から8月30日(水曜日)まで

旭山動物園開園50周年記念ポスター展

とき 7月1日(土曜日)から27日(木曜日)まで

お問い合わせ先

旭川市総合政策部広報広聴課広報係

〒070-8525 旭川市7条通9丁目 総合庁舎6階
電話番号: 0166-25-5370
ファクス番号: 0166-24-7833
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受付時間:
午前8時45分から午後5時15分まで(土曜日・日曜日・祝日及び12月30日から1月4日までを除く)